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2021.11.12

【インタビュー】独自の視点をフィーチャーした「人」が主役のツアーを企画 まいまい京都代表・以倉敬之さん

暮らしや風習、街の歴史、自然、地形……
何かを偏愛する多彩なガイドさんが、独自の視点で愛たっぷりに街を案内するまち歩きツアーを多数主催する「まいまい京都」さん。2018年からは「まいまい東京」も始動し、人気を集めています。
代表の以倉敬之(いくら・たかゆき)さんに、ツアーを主催する上で大切にしていることや、今後取り組んでみたいことなどをお伺いしました。

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以倉 敬之(いくら たかゆき)さん・プロフィール

まいまい京都代表。高校中退後、バンドマン、吉本興業の子会社勤務、イベント企画会社経営をへて、2011年よりまいまい京都を開始。テレビ番組「ブラタモリ」「よ~いドン!」などに出演。共著に「あたらしい『路上』のつくり方」。

▷まいまい京都 https://www.maimai-kyoto.jp/
▷まいまい東京 https://www.maimai-tokyo.jp/

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その人自身の視点から出てくる言葉こそ面白い

――「まいまい京都」を立ち上げたきっかけを伺えますか?

京都に引っ越し、「街を独自の視点で見ている人と一緒に巡って、京都の街を楽しみたいな」と思ったことがきっかけです。
引っ越す前に住んでいた大阪では観光の仕事を行っており、行政主催の街歩きイベントやツアーのコーディネートなどを手がけていましたが、行政のツアーでは、最初に街歩きマップを作って、それを喋れる人を募って、研修してツアーをする……という進め方になりがち。また、税金で行っていると持続性がないといった課題があったので、民間でやるべきだと思ったこともきっかけの一つです。

――「まいまい京都」さんのツアーは、ガイドさん独自の「視点」にフィーチャーされていますよね。これは最初から?

立ち上げ当初は、そこまで「人」を打ち出していたわけではありませんでしたが、やっていくうちに、人の目線が一番面白いので、人自体がツアーの一番の魅力だと気づきました。
「○○さんと行く」という点をしっかり打ち出すことが、ツアーの魅力を引き出すことにもなるんです。

――ツアーのガイドさんはどのように選定しているんでしょうか?

「面白い」ということがすべてです。
スタッフが本やSNS、ブログなどで探して「この人、面白い!」と思った人に声をかけていきます。
企画はスタッフ数人で会議を行い案を出し合っています。コース数の計画は立てますが、ある程度おおらかにやっています。
ツアーはすべて「人ありき」。面白いガイドさんがいないと始まらないので、人との出会いは大事ですね。

――印象深いツアーはありますか?

2011年の立ち上げ時からガイドを務めてくださっている梅林秀行さんは、Twitterで「ブラタモリを京都でするなら」といったことをつぶやいているのを見つけて、お声がけしました。
街の高低差をこよなく愛する梅林さんが、京都の街中に残る御土居をガイドするツアーは、人気のツアーになりました。
2014年、NHKの番組「ブラタモリ」が全国展開する際に私のところに連絡があったので、梅林さんがぴったりだなと思い、番組にご紹介しました。まいまい京都でのツアーでも巡った御土居をディレクターさんと一緒に歩いたところ「面白い!」と言われ、番組内でも梅林さんがタモリさんをガイドしました。
以来、梅林さんはブラタモリに8回も出演されています。まいまい京都で開催したツアーがきっかけで、ブラタモリの最多出演につながったので、嬉しかったですね。

――ガイドさんに対して研修などは行っているんでしょうか?

視察でも「どうやって研修しているんですか」と聞かれることがあるんですが、研修は行っていません。
まいまい京都のガイドさんは、ツアーの経験のない人がほとんど。ツアーの既成概念がないので自由なんです。
研修で得た付け焼き刃の言葉よりも、その人自身が日々考えていることや熱中していること、仕事や暮らしを通じて出てくる言葉こそ面白い。多少のテクニックは追々お伝えすることはありますが、「歩きながら喋らない」「時間管理をする」といった細かいテクニックに関しては、スタッフがフォローすればいいかな、と考えています。

参加者の7割は一人客

――ツアーに参加されるのは、どのような方が多いんでしょうか?

全体の75%は近畿圏内で、そのうち過半数は京都の方です。地元の方こそ、この街を違う目線で見てみるとこんなに面白いのか、という気づきがあるので、おすすめのツアーを聞かれたときも「馴染みのある場所のツアーこそ面白いですよ」とお答えしていますね。
また、ガイドさんという「人」にファンがつくので、「あのガイドさんのツアーならどこでも参加したい」という参加者さんもいらっしゃいます。

――お話を伺っていると「まいまい京都」さん自体にファンがついているように思いました。参加者さん同士のコミュニティーを作るために何か取り組んでいることがあるんでしょうか?

コミュニティーを作りすぎると新しい人が参加しづらくなるので、排他的な空気にならないように気をつけています。
全参加者の7割くらいが、一人参加。全ツアーそれぞれ、一見さんでも楽しんでもらえるようにしています。
リピーターさんが多いので「○○さん、久しぶり!」とはなるんですが、予定を合わせて来るのではなく、たまたま。最初はご夫婦で参加して、次は奥さんと旦那さんが、それぞれ別のツアーに参加する、という場合もあります。
スケジュールや趣味に合わせて、一人でも自由に参加しやすいツアーが、多様化する現代社会に求められています

一人で行くからこそ、現地の人とのコミュニケーションが楽しい。ツアーを通して友だちになり、結婚した方もいらっしゃいました。それも一人で来られているから。
結果としてリピーターは多いですが、だからこそリピーターを優遇しすぎないようにもしています。

「まいまい京都」自体が目的となるツアーを

――昨年はコロナ禍で観光業界が大打撃を受けた中、まいまい京都さんは過去最高益を達成したとか。

2020年5月からオンラインツアーをはじめたのが大きかったですね。
ありがたいことに「まいまい京都」自体にファンがいてくれて、舞台がオンラインに変わっても参加してくださるんです。
リアルのツアーだと、どれだけ人気でも100人連れて歩くわけには行きませんが、オンラインだと定員の枠はありません。
一番人気だったのは、歴史学者の磯田道史先生と二条城事務所長の北村信幸さんの案内で、二条城の一般客非公開のエリアを生配信で巡るツアー。900人もの参加者が集まりました。
普段のツアーと比べると、日本全国だけでなく海外からも参加者が集まるのがオンラインのいいところです。

――今年も引き続き外出自粛の状況が続いていますが、いかがでしょうか。

今年になるとオンラインツアーの需要が少しずつ減ってきて、「やっぱり現地へ行きたいよね」という雰囲気になっています。
今年はオンラインツアーはほとんどやめて、オンラインサロンをはじめました。サロンはガイドさんが一つのテーマを話すトークイベントやサロンメンバー限定ツアーなど、テーマごとに学びを深めていく内容です。
月額制で数百人ご参加いただいているので、普段は入れないところへ伺うスペシャルツアーも企画しやすくなりました。

――今後手がけてみたいことはありますか?

2021年の10月に「まいまい東海」を立ち上げました。ツアーのタイトル決めなど、企画は一緒に練り上げていますが、基本的には地元の組織に運営していただいています。
うまくいけば、色々な地域に展開していけたらいいですね。

様々な街で、独自の視点を持った人たちと歩くツアーを開催し、「人」が主役のツアーがどんどん定着していけばいいなと思います。
まいまい京都のツアー参加者には、うちのツアーの抽選が通ったから、宿や交通の予約を取るという方も多いんです。
「○○という街に行くから、ついでにどこかへ行きたい」ではなく、まいまい京都自体が旅の目的となるツアーをどんどん作っていきたいと思っています。

 


 

【イベント告知】

合同会社別視点では、このたび新たな活動として、ユニークな視点で地域活性に取り組んでいる企業や団体、個人の皆様が情報交換や相互交流を行う場づくりをはじめました。
第一弾として、11月27日(土)に「地域スクランブル大作戦〜ヒカリエに集え!地域の視点〜」を開催いたします。
ユニークな視点で地域を盛り上げる活動に従事されるスペシャリストの方々をお招きし、地方活性化の秘訣をゲストに詳しく解説していただくほか、参加者の皆さまがそれぞれお持ちの課題について、登壇者を交えながらディスカッションする内容も予定しております。

現在オンライン参加を受付中!
お申し込みはこちらから:https://forms.office.com/r/99gJt2a7k5

ご参加お待ちしております。

 

■イベントについて
イベント名:地域スクランブル大作戦〜ヒカリエに集え!地域の視点〜
日時   :2021年11月27日(土)14:00-17:00
会場   :YouTubeライブにて配信(PC、スマホ、タブレットより視聴いただけます)
参加費用 :無料
詳細   :https://www.hikarie8.com/court/2021/10/post-297.shtml